インバウンド産業でフランチャイズ業界が盛り上がる?〜外国人観光客3000万人を取り込め〜

昨年の訪日外国人客数が2800万人を超え、目標とする2020年の4000万人に着実に近づくなか、インバウンド効果を利用したフランチャイズビジネスが活況を見せています。外国人観光客が日本を訪れる理由も「モノ消費」から体験型の「コト消費」へと移行。日本独自の文化・サービスを楽しみたいとする需要が高まりつつあります。

東京だけでも800万人以上が訪れる訪日客。今後は外国人の旅行をサポートする事業から新たなビジネスチャンスが誕生しそうです。

本記事ではFCビジネスの盛り上がりにつながるインバウンド産業の実態を詳細に見ていきます。

最新の訪日外国人客数

JNTO(日本政府観光局)によると、訪日外客数は、2017年11月時点で2616万9000人となり、年間では3000万人に届かなかったものの、2800万人超えは確実となりました。11月単月としては前年同月比26.8%増加の237万8000人で過去最高を記録しました。JNTOは訪日客数が順調に伸びている理由について「航空路線の新規就航や増便、クルーズ船寄港数の増加に加え、紅葉シーズンの到来も、各市場で実施した訪日旅行プロモーションの効果と相まって訪日意欲を喚起した」と述べました。

韓国人韓国客が圧巻の600万人越え

訪日外客数を国別に見ると、サード(THAAD)問題で揺れていた中韓両国からの訪日が他を突き放しました。昨年11月で最も多かったのは韓国からで62万2600人。前年同月比では約200万人の増加となりました。ついで、中国の56万7100人で伸び率は31.0%でした。

アジア地域では、台湾・香港も前年同月比で高い伸びを記録しました。中韓所得世帯の増加が続くインドネシア、フィリピン、ベトナムなどの3カ国ではいずれも30%以上の伸び率となりました。

アジアオセアニア地域 訪日外国人観光客数(2017年11月期)

国・地域 総数 伸び率
韓国 62万2600人 45.8%
中国 56万7100人 31.0%
台湾 36万3200人 20.8%
香港 17万2900人 13.5%
タイ 9万4500人 17.6%
シンガポール 5万0500人 16.6%
マレーシア 5万2200人 17.5%
インドネシア 2万8500人 30.4%
フィリピン 4万0600人 35.3%
ベトナム 2万4900人 37.4%
インド 1万0900人 −2.3%
オーストラリア 3万9200人 18.3%

(日本政府観光局JNTO発表資料より作成)

訪日外客数全体に占める東アジアの割合は前年同月比2.6%増加し72.6%となります。特に韓国が約20万人増加したことで東アジアのシェア率上昇につながりました。このほか東南アジアは前年同月比0.6%減少、欧米豪は1.1%減少となりました。

欧米市場も過去最高を更新

一方、欧米地域の伸び率は、緩やかながら堅調に推移しています。フランス9.8%、イタリア8.4%、イギリス6.4%は2桁伸び率に迫る勢いです。またピザの緩和が続くロシアからの訪日客数も伸びました。前年同月比で約2800人の増加で伸び率は56.5%と最も高い数字を記録しました。このほか、インドを除く19カ国・地域で11月として過去最高を記録しました。

欧米地域の訪日外客数

アメリカ 11万4900人 10.7%
カナダ 2万5000人 4.0%
イギリス 2万5000人 6.4%
フランス 1万9100人 9.8%
ドイツ 1万5900人 3.3%
イタリア 9300人 8.4%
ロシア 7800人 56.5%
スペイン 7100人 15.1%
合計 237万7790人 26.8%

(日本政府観光局JNTO発表資料より作成)

外国人向けサービスでFC市場も拡大

外国人観光客の増加で期待されるのがインバウンド効果です。観光庁「訪日外国人消費動向調査」によると、2016年の訪日外国人旅行消費額は3兆7476億円となり、初めて1兆円を突破した2012年から過去5年間で300%以上増加しています

そこで急成長しているのが外国人向けサービス産業。外国人の人気となっている着物の着付けサービスや茶道を体験できるサービス、移動中の荷物預かりサービス、外国人が好む客室づくりなど、インバウンドビジネスが盛り上がりを見せています。

カプセルホテルなどは安価に宿泊できる点と外国には見られない独特のスタイルが人気を呼びました。また、ビジネスホテルはより安全に寝泊まりできる施設として女性を中心に利用が拡大しています。さらに手軽に宿泊できる民泊も新しいビジネスモデルとして利用が進んでおり、昨年10月には民泊新法(住宅宿泊事業法)が成立するなど急ピッチで法整備が進められています

オーストラリア人が最もお金を使う?

訪日外国人の消費と言えば中国人による「爆買い」のイメージが強かったですが、最近は欧米豪勢の消費額が猛追しています。

観光庁によれば訪日外国人1人当たりの旅行支出額で最も多かったのがオーストラリア人で前年比6.7%増加となる24万6866円だったことがわかりました。次いで、中国人23万1504円(−18.4%)、スペイン人22万4072円(−1.4%)、イタリア人19万8000円(−2.0%)、ロシア人19万874円(+4.6%)、フランス人18万9006円(−9.7%)となりました。

訪日外客1人当たり旅行支出額ランキング

2中国23万1504円−18.4%3スペイン22万4072円−1.4%4イタリア19万8000円−2.0%5ロシア19万0874円+4.6%6フランス18万9006円−9.7%7ベトナム18万6138円−4.5%8イギリス18万1795円−13.7%9アメリカ17万1418円−2.4%10ドイツ17万1009円−0.0%

順位 国籍・地域 旅行支出額 前年比
1 オーストラリア 24万6866円 +6.7%

(国土交通省観光庁平成28年「訪日外国人消費動向調査」確報)

前年比との比較では中国が約2割近く消費額が落ち込んでいます。以前は高級腕時計や家電製品などが飛ぶように売れていたものの、近年は「モノ消費」から体験型の「コト消費」へと移ったように、爆買いは一定の落ち着きを見せています。また、旅行者数で最も多くなった韓国人の旅行支出額は7万281円と全国籍・地域の中でも特に低かったのが特徴的でした。全体の平均は15万5896円で前年より11.5%の減少でした。

なお、全体の旅行消費額では、中国が1兆4754億円で全体の39.4%を占めました。次いで台湾5245億円(14.0%)、韓国3577億円(9.5%)、香港2947億円(7.9%)、アメリカ2130億円(5.7%)、タイ1150億円(3.1%)と続きました。

宿泊料金は欧米豪が上位を独占!

ホテルなどの宿泊施設を利用する外国人の国籍にも変化が表れています。1人当たり旅行支出額を費目別にみると、「宿泊料金」では欧米豪勢が上位を独占しました。最も高かったのがオーストラリアの9万9802円で平均宿泊数は13.2日でした。次いで、スペイン9万2211円(同14.0日)、イギリス8万131円(12.6日)、ドイツ7万8849円(14.0日)、イタリア7万8549円(12.8日)、フランス7万5462円(16.0日)、アメリカ7万707円(14.1日)と続きました。

「宿泊料金」支出ランキング

順位 国籍・地域 宿泊料金 平均宿泊数
1 オーストラリア 9万9802円 13.2日
2 スペイン 9万2211円 14.0日
3 イギリス 8万0131円 12.6日
4 ドイツ 7万8849円 14.0日
5 イタリア 7万8549円 12.8日
6 フランス 7万5462円 16.0日
7 アメリカ 7万0707円 14.1日
8 ロシア 6万1845円 21.1日
9 インド 6万1354円 22.8日
10 シンガポール 5万8462円 8.0日

(国土交通省観光庁平成28年「訪日外国人消費動向調査」確報)

オーストラリアは、「娯楽・サービス」で1万7957円と最も多くなりました。
一方、「買い物代」では中国が12万2895円で2位以下を大きく引き離しました。このほか、中間所得層が増加しているベトナムは平均宿泊数が最も多い35.4日となり、飲食費でも5万4182円で最も多くなりました。

商店街に来る外国人の現状

インバウンドビジネスに取り組むためには外国人が現地で何を求めているかを把握する必要があります。外国人旅行者が訪れた全国の商店街の調査した中小企業庁「商店街インバウンド実態調査報告書」によると、商店側が考える「外国人観光客が不便に感じていること」では「免税に対応していない」「外貨両替機が少ない」「クレジットが利用できない」などが指摘されました。

「外国人旅行者が不便に感じていること」とは

外国人のリピート率がとても高い日本旅行。しかし、現地で不便を感じることも決して少なくありません。実際に外国人が多く訪れる商店街へのアンケート調査では、「(日本人と)コミュニケーションがとれない」「(日本の)サイン・案内板が分かりにくい」ことを理由に、戸惑う外国人旅行者をよく見かけると回答しました。

このほか「免税に対応していない」(25.3%)、「通信環境が悪い」(15.3%)、「外貨両替機が整備されていない」(14.2%)、「クレジットカード等が利用できない」(14.1%)などもありました。

日本よりも電子決済が普及している諸外国からの旅行者は、現金しか受け付けないお土産屋でお金が足りなくなることが多く、付近に外貨両替場所もないため、不便と感じることが多いようです。

さらに、インターネット通信環境については、国内の各駅中・駅前では公共無線LANの普及が進んでいるものの、地方の観光地では十分に整備が行き届いているとは言い難い状況です。

商店街が考える「外国人が不便に感じている」と思うこと

内容 割合
コミュニケーションがとれない 36.6%
サイン・案内板が分かりにくい 31.0%
免税に対応していない 25.3%
トイレが少ない 20.8%
地図・パンフレットが分かりにくい 16.3%
休憩スペースが少ない 15.6%
通信環境が悪い 15.3%
外貨両替機が整備されていない 14.2%
クレジットカード等が利用できない 14.1%
商店街または周辺に宿泊施設がない 6.3%

(参照:中小企業庁「商店街インバウンド実態調査報告書」平成29年3月)

自動外貨両替機の設置のニーズの高まりを受けて外貨両替事業のフランチャイズビジネスが注目されていますFCビジネスのコンサルティングを行っている「フランチャイズ開業支援センター」によれば、観光地のホテルや駅構内など必要なスペースは0.25坪ほどで足り、「中長期的な成長性に加えて、需給ギャップがあると判断できるマーケット」としています。

(参照:フランチャイズ開業支援センター

商店街のインバウンド事業の取り組み例

外国人がよく訪れる商店街がインバウンド事業として取り組んでいるものの中で最も多いのが「Wi-Fiの設置」(24.0%)でした。次いで、「マップ・パンフレット等の多言語化」(18.6%)、「ホームページの多言語化」(27.0%)、「クレジットカード等決済端末の導入」(24.1%)、「組合員・会員向けの語学研修の実施」(22.7%)となりました。

インバウンド事業の取り組み内容

内容 割合
Wi-Fiの設置 62.4%
マップ・パンフレット等の多言語化 58.2%
ホームページの多言語化 27.0%
クレジットカード等決済端末の導入 24.1%
組合員・会員向けの語学研修の実施 22.7%
ガイドブック等への掲載依頼 21.3%
サイン・案内板の多言語化 19.9%
免税手続きカウンターの設置 17.7%
外国人向け食事メニューの開発・提供 14.2%
情報発信ツール(アプリなど)の整備 8.5%
外国人向けの観光ツアー・イベントの実施 7.8%
外国語対応可能な観光案内所の整備 5.0%
外国語対応可能なボランディアの配置 4.3%
面性端末の設置 3.5%
外貨両替機の設置 3.5%
通訳案内士の設置 3.5%

2030年までに訪日外客年間6000万人を目指している日本政府。今後もインバウンド産業とフランチャイズビジネスのコラボレーションに注目が集まりそうです