ホテル、印刷、クリーニング、リース、学習塾などサービス業のフランチャイズ市場概況

フランチャイズと言えばコンビニなどの小売業やハンバーガーなどのファストフードの外食業が代表的ですが、今、サービス業FCが注目を集めています

サービス業のフランチャイズは市場規模で言えば3兆897億2000万円で外食業(4兆580億200万円)に引けを取りません。サービス業の業種にはCD・DVDレンタル業やコピー機・OA機器のリース業、冠婚葬祭業、ホテル・レジャー施設等、家事支援サービス業などが含まれます。

これらの業種を日本フランチャイズチェーン協会が分類している「レジャーサービス・ホテル」「リース・レンタルサービス」「その他サービス」に分けて見ていきましょう。

サービス業のフランチャイズ市場規模

昨年度の全国のフランチャイズチェーン数は前年度から0.5%増えて1335チェーンでした(日本フランチャイズチェーン協会より)。店舗数は26万3109店舗で前年度より2117店舗の増加。売上高は25兆973億7800万円で5028億5000万円増加しました。

このうちサービス業は422チェーン、9万5782店舗で、売上高は前年度より524億2100万円増加となる3兆1421億4100万円でした。

2016年度の国内FC市場規模

小売業 外食業 サービス業 合計
チェーン数 342 571 422 1335
店舗数 10万8631店舗 5万8696店舗 9万5782店舗 26万3109店舗
売上高 17兆8404億1700万円 4兆1148億2000万円 3兆1421億4100万円 25兆973億円

(参照:日本フランチャイズチェーン協会)

サービス業の分類

日本フランチャイズチェーン協会は、サービス業の業種を、ホテル・レジャー施設の「レジャーサービス・ホテル」、CD・DVD・ビデオレンタル、建設機器レンタル、レンタカー、生活用品レンタルなどの「リース・レンタルサービス」、職業紹介、家事支援サービス、マッサージ、介護サービス、ペット関連サービス、冠婚葬祭業、保育所、運送業、情報サービスなどの「その他サービス」に分類しています。

サービス業の分類表

レジャーサービス・ホテル ホテル・レジャー施設
リース・レンタルサービス CD・DVD・ビデオレンタル、建設機器レンタル、レンタカー、生活用品レンタル
その他サービス 職業紹介、家事支援サービス、マッサージ、介護サービス、ペット関連サービス、冠婚葬祭業、保育所、運送業、情報サービス、DPE・印刷・コピーサービス、自動車整備・住宅リフォーム・ビルメンテナンス

クリーンサービス・クリーニングの店舗3%増加

サービス業はチェーン数では前年度より1.7%増加、店舗数では1.0%増加、売上高では1.7%の増加となり、いずれも好調でした。

サービス業を業種別にみると、「クリーンサービス・クリーニング」「レジャーサービス・ホテル」が前年度より店舗数を大きく伸ばしていることがわかります。

「クリーンサービス・クリーニング」は28チェーン、6128店舗、昨年度の売上高1419億3200万円です。コインランドリーを中心に出店が伸びた結果、店舗増加につながりました。若者や高齢者を含めた一人暮らし世帯の増加や共働き世帯の増加で、コインランドリー需要が高まりました。一方、クリーニング業は売り上げが前年度比で2.5%減少しました。

レジャーサービス・ホテル需要高まる

「レジャーサービス・ホテル」の市場規模は、22チェーン、1191店舗、売上高2045億3500万円でした。

訪日外国人旅行者を背景に、都内など一部ではビジネスホテルの予約が取れないとホテル市況が好調です。2017年10月時点での訪日外客数は2379万1500人で、残り2ヶ月を合わせると3000万人に迫る勢いとなっています。全国主要都市の宿泊施設に占める外国人利用者の割合は東京都渋谷区、新宿では50%を超えます

外国人宿泊者が占める割合

主要都市 全体の宿泊者数 外国人宿泊者 全体のうち外国人宿泊者が占める割合
北海道札幌市 856万7634人 178万0903人 20.8%
東京都新宿区 363万9292人 194万9351人 53.6%
東京都渋谷区 148万3695人 76万2736人 51.4%
大阪府大阪市 1412万3196人 418万7366人 29.6%
福岡県福岡市 648万4214人 134万3299人 20.7%

こうした中、中国人観光客を中心に個人旅行が増加しており、安くて気軽に宿泊できるカプセルホテル需要が高まりを見せています。当初は、男性旅行者や国内ビジネスマンの利用がメインだったものの、最近は女性客向けとなる、セキュリティ性が高くて通常より広めのコンパクトホテルも人気となっています。カプセルホテルは初期投資が小さく、面積あたりの収益性が高いなどのメリットが多い施設です。そのため、築年数の古いオフィスビルなどを改装してコンパクトホテルにコンバージョンする動きが活発化しています。

(▲外国人に人気のカプセルホテル)

子どもの数は少なくても塾は増えている?

少子高齢化が止まらない中、「学習塾・カルチャースクール」の数は伸びています。高齢化率は27.3%で、総人口は1億2693万人。65歳以上人口は3459万人ですが、0〜14歳の年少人口は1578万人です。このまま高齢化が進行すると2065年には約2.6人に1人が65歳以上となり、高齢化率は38.4%に達すると予測されています。

1人当たりの教育費が増加

「学習塾・カルチャースクール」は、前年度より2チェーン増えて92チェーンになりました。また、店舗数は479店舗増えて3万2717店舗、売上高は6億7200万円増加の4887億5400万円です。

ひと家庭における子どもの数が少なくなった反面、1人当たりにかける教育費用は増加傾向です。小学校で英語教育が始まったことや新指導要領により授業時間が増えたことから学習塾増加につながったと見られています。

なかでも近年は集団型よりも個別指導型の学習塾需要が高まっています。1人もしくは2人の生徒に対して1人の指導員をつけることで、生徒の習熟度に応じた授業を展開でき、保護者からも好評を博しています。

今後の学習塾FCついて、日本フランチャイズチェーン協会は、「サービス業は景気動向に加え、介護保険法改正、小学校の英語教育の開始、訪日ビザ発給要件の緩和などを始めとする社会制度の変化に影響を受けやすいといった特徴がある。しかし、社会制度変更に柔軟に対応していくことで新しいサービスを提供するフランチャイズが誕生することも予想される」と述べました。

英会話教室は幼児・子ども向けで需要増?

米国に留学する日本の学生が過去最低を記録するなど、内向的になりつつある中、幼児・子ども向けの外国語教室の市場規模は前年度比で2.0%増加し1030億円となりました(矢野経済研究所「語学ビジネス市場に関する調査」より)。2017年は1050億円になると見込まれています。

外国語教室市場規模

2016年 2017年
成人向け外国語教室 2100億円 2110億円
幼児・子ども向け外国語教室 1030億円 1050億円
プリスクール市場 360億円 375億円
全体 3490億円 3535億円

(矢野経済研究所「語学ビジネス市場に関する調査」)

同調査によれば、0歳〜中学生を対象とした「幼児・子ども向け外国語教室市場」は増加傾向で、その背景には小学校における英語学習の必修化や大学入試センター試験の廃止が指摘されます。英語は従来の「読む」「聞く」から「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能が重視されるようになります。

今後の語学ビジネス市場の動向について、調査を行った矢野経済研究所は、

「今年の語学ビジネス総市場規模は8,682億円(前年度比102.2%増加)と予測する。小学校の英語義務教育化、大学入試における英語試験内容改革の影響から、少子化ではあるものの、英語を学習する子どもの数は増加すると予測されることから、引き続き幼児・子供向けサービス(幼児・子供向け外国語教室、プリスクール、幼稚園・保育園向け英語講師派遣、幼児向け英会話教材市場)を中心に語学ビジネス市場は堅調に推移するだろう」(参照:矢野経済研究所)

と分析しました。

一方、成人の英会話利用意向は、「積極的に利用したい」とする層が1割に見たいのが現状です。
独立行政法人中小機構(中小企業基盤整備機構)の調査によると、20代〜60代の男女のうち英会話教室を「よく利用している」とする割合は3%にとどまります(2008年時調査)。最も高いのが「20代男性」の9%で、最も低いのが「50代男性」で0%でした。男女別に見ると、20〜30代では男性の利用が高いものの、40代以降は女性の利用率の方が高くなる傾向があります。

自動車整備市場も好調

人口減少や少子高齢化、若者の車離れの影響で自動車整備市場全体は縮小傾向にあります。特に地方では整備工場の不足により自動車の安全性や、地域の雇用悪化が懸念されています。

自動車の利用者減少と高齢化

1980年当時と比較すると、日本の総人口は2030年までに65歳以上は4倍近く増えて4000万人近くに達すると見込まれています。また、将来の自動車ユーザーとなる0〜15歳の年少人口は約3000万人から1500万人ほどに落ち込むと試算されています。

また、経営者の高齢化から後継者不足も深刻化しています。国土交通省調査によると、従業員3人未満の零細整備工場業者では約3割が後継者不足にあるとされています。

このほか、若者の車離れから自動車整備関連の専門学校に入学する者の数も減少しています。特に全国自動車大学校・整備専門学校協会(JAMCA)に入学する生徒数は過去10年間の間で半分以上落ち込み約6000人となりました(2012年時点)。

店舗数、売上高ともに増加

しかし、フランチャイズ市場に限ると店舗数は前年度より55店舗増えて1795店舗、売上高は8億1200万円増加の178億4900万円でした。なかでも車検工場をフランチャイズ展開する企業の業績が好調で、市場拡大につながっています。

今後の課題は、経営者の高齢化や自動車ユーザーと保有台数の減少への対応と指摘されています。また、好調のハイブリッド車・電気自動車に対応できる整備士の確保も重要になると国交相は述べています。

整備要員の平均年齢の推移

(参照:国土交通省「自動車整備を取り巻く現状と課題」)

サービス業における業種ごとのチェーン数、店舗数、売上高比較

チェーン数 店舗数 売上高
クリーンサービス・クリーニング 28 6128 1419億3200万円
理容・美容 49 4875 1079億6400万円
DPE・印刷・コピーサービス 10 1989 780億3400万円
レジャーサービス・ホテル 22 1191 2045億3500万円
自動車整備 10 1795 178億4900万円
リース・レンタルサービス 31 1万3036 9105億7700万円
学習塾・カルチャースクール 92 3万2717 4887億5400万円
住宅建築・リフォーム・ビルメンテナンス 60 9278 7528億8100万円
その他サービス 120 2万4773 4396億1500万円