ソーシャルビジネスに取り組む企業の75%が赤字〜ソーシャル・フランチャイズの取り組み〜

社会的課題・地域的課題の解決を目標とするソーシャルビジネス。障害者の就労支援や高齢者支援、子育て支援、環境問題などに取り組む企業がそれに当たりますが、日本政策金融公庫によれば、赤字企業が4分の3を占めるなど難しい経営実態がうかがえます。

ソーシャルビジネス企業では、従業員の女性比率が31.6%と高いのが特徴的ですが、小規模な企業が91.4%と大半を占めます。
売上高をみると1,000万円未満の企業が28.8%で最も多く、日本政策金融公庫は、「ソーシャルビジネスは小規模なものが多く、モノやサービスを販売した収入だけで必要な経費を賄えている企業は少ない」と話します。

中央官庁や各地方自治体レベルでさまざまな新規創業支援策が講じられているものの、「儲からない」と言われるソーシャルビジネス。社会貢献度が高いビジネス分野なだけに、業界を盛り上げる新しいアイデアが求められています。

本記事では、日本政策金融公庫の「ソーシャルビジネスの経営実態」をもとに、ソーシャルビジネスにおける企業経営の状況を詳しく見ていきます。

ソーシャルビジネス企業の実態

年間収入1000万円以上の会社(株式会社、有限会社、合同会社など)および一般社団法人、特定非営利団体を対象にアンケート調査が行われました。

本調査では、社会的問題は、1:社会的排除に関する問題、2:地域社会に関する問題、3:地球環境に関する問題、4:開発途上国の支援に関する問題の4つに分類されました。

社会的排除に関する問題 貧困、心身の障害など何らかの理由から就職できない、教育を受けられないなど社会から追いやられる問題
地域社会に関する問題 過疎、高齢化、子育て、雇用機会の減少、教育・文化施設の不足など地域が抱える問題
地球環境に関する問題 地球温暖化、オゾン層の保護、生物多様性の維持、海洋汚染など国際的な環境問題
開発途上国の支援に関する問題 産業の育成、貧困対策など、途上国における経済・社会の発展に関する問題

社会的課題に取り組む企業のうち、株式会社はわずか6.1%

ソーシャルビジネスに取り組む企業の種類を法人別にみるとNPO法人が最も多い75.1%、ついで一般社団法人41.8%、会社6.1%となりました。

その内訳では、法人の立ち上げ目的において、「社会的問題を解決するために設立した」とする割合は、NPO法人67.2%、一般社団法人27.6%、会社1.6%となります。

「法人の目的ではないものの、社会的問題を解決するための事業を営んでいる」とする企業の割合は、NPO法人5.3%、一般社団法人5.2%、会社3.1%となりました。

「社会的問題を解決する法人や団体を支援する事業を行っている」企業は、NPO法人2.6%、一般社団法人9.0%、会社1.4%となります。

NPO法人 社団法人 会社
社会的問題を解決するために設立した 67.2% 27.6% 1.6%
法人の目的ではないものの、社会的問題を解決するための事業を営んでいる 5.3% 5.2% 3.1%
社会的問題を解決する法人や団体を支援する事業を行っている 2.6% 9.0% 1.4%
75.1% 41.8% 6.1%

(日本政策金融公庫公表資料より作成)

取組内容は障害者支援など「社会的排除」が最多

取り組んでいる社会的課題の内容では、「地域社会」に関する問題が68.1%と最も多く、次いで「社会的排除」52.6%、「地球環境」13.2%、「開発途上国支援」4.7%と続きました。

「地域社会」の問題の中で最も多かったのが「障害者支援」で、最多となる211社が取り組んでいました。このほか、「高齢者支援」80社、「子育て支援」80社、「環境関連」48社、「地域活性化関連」47社、「高齢者・障害者支援」29社、「途上国支援」8社、「若者支援」3社、「ホームレス支援」3社、「母子家庭支援」2社、「貧困者支援」2社となりました。

ソーシャルビジネスの内容

内容 取り組む企業数
障害者支援 211社
高齢者支援 80社
子育て支援 54社
環境関連 48社
地域活性化関連 47社
高齢者・障害者支援 29社
途上国支援 8社
若者支援 3社
ホームレス支援 3社
母子家庭支援 2社
貧困者支援 2社

(日本政策金融公庫公表資料より作成)

ソーシャルビジネスは女性比率が高め

ソーシャルビジネスに取り組んでいない企業の従業員の男女構成比をみると、男性91.9%、女性8.1%となります。一方、ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業では、男性68.4%、女性31.6%となり、女性の比率が高いことが分かります。

「ソーシャルビジネスだけでは赤字」、全体の75%

次に、直近1年間の「ソーシャルビジネスによる」採算をみると、赤字とする企業75.0%を占めました。

売上高5000万円超が4分の1

売上高では、「1000万円未満」が28.8%と最も多く、次いで「2000万〜5000万円」27.8%、「5000万円超」25.1%、「1000万〜2000万円」18.3%となります。
報告書のなかで、日本政策金融公庫は、「ソーシャルビジネスは小規模なものが多く、モノやサービスを販売した収入だけで必要な経費を賄えている企業は少ない」と述べました。

ソーシャルビジネスの売上高

(参照:日本政策金融公庫)

企業全体では約7割が黒字

ソーシャルビジネスによる売り上げでは赤字になるものの、多くの企業は補助金を受け取ったり、ソーシャルビジネス以外の事業収入があるため、企業全体では69.2%が黒字となっています。

ソーシャルビジネス以外の収入としては、補助金66.5%(平均2317万円)、寄付金・寄贈品50.9%(494万円)、会員からの会費71.2%(209万円)、別事業の売り上げ38.1%となります。

今後の課題として、日本政策金融公庫は、

「社会的問題を解決するというソーシャルビジネスのミッションについて成果が上がっているかどうかをみると、目標を達成している企業の割合は47.3%と半数に届いていない。ただ、活動内容を外部に周知している企業や他の法人と連携して取り組みを進めている企業は、これらを行っていない企業に比べて目標を達成している企業の割合が多い。ソーシャルビジネスでは、外部の人や企業との関係を築いていくことが重要である」

と述べました。

スラム街でソーシャルフランチャイズを展開する企業

社会的課題の解決に取り組む企業のうち、途上国や後進国での医療支援を行うソーシャルフランチャイズビジネスがあります。

医師や看護師によるフランチャイズ事業

米フランチャイズ情報誌「フランジャイズ・タイムズ」によると、NGO団体の「CFWShops(Child and Family Wellness Shops)」はケニア・ナイロビにて必要最低限な医薬品を提供するフランチャイズ事業を営んでいます。

アフリカ最大のスラム街とされる首都ナイロビの「キベラ」では、腐敗した政府が支給する薬を信用できず、健康悪化に苦しむ市民が後を絶ちません。そこでCFWShopsは、細工がされていない“正しい”薬を提供し、利益よりも救済を優先するため、このスラム街にソーシャルフランチャイズを開業しました。

(最大のスラム街、ナイロビ・キベラの街並み)

お金が払えない人も薬を提供

加盟者の多くが看護師資格を有する女性で、薬代が支払えない客も拒まないとします。キベラでは1日1ドル以下で暮らす人が大半のため、CFWShopでは、誰を信用するのか、どうやって薬を無料で提供するのかなどの判断をフランチャイジー(加盟者)に任せているといいます。

常に収支のバランスを見極めながら運営することが求められるソーシャルフランチャイズ。利益率や、報酬は高くないものの、その社会的な存在意義は極めて高いと言えます。