フランチャイズを始めたいなら知っておくべき法知識

加盟店としてフランチャイズビジネスを始めたい方はもちろん、本部(フランチャイザー)として経営に携わりたい方にも知っておいてもらいたい法律知識をご紹介します。

フランチャイズビジネスに関係する法律とはズバリ、「中小小売商業振興法」と「独占禁止法」です。

フランチャイズシステムにおける本部と加盟店との間には、契約の性質上、上下関係が生じることがあります。本来両者は独立した存在ですが、加盟店は商品の仕入先の選定、数量など本部からの制約を受けることが多いのが実情です。

加盟店として本部と対等に交渉を進めるためにも、フランチャイザーとして加盟店側に提供するべき情報を正確に把握するためにも、関係法規を勉強しておきましょう。

中小小売商業振興法と独占禁止法

日本でフランチャイズビジネスを始める際は、次の2つの法律の制約を受けることになります。

中小小売商業振興法 中小小売業の経営の振興を図る目的で作られた法律。したがって、フランチャイズのみについて規定しているわけではない
独占禁止法 公正で自由な競争を確保するため作られた法律。正式名称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」

中小小売商業振興法におけるフランチャイズ

中小小売商業振興法では、フランチャイズの定義(第4条5項)とフランチャイズ契約を結ぶ際、本部が加盟者側に対して情報開示する項目を定めています。

特定連鎖化事業とは

中小小売商業振興法では、商業の経営近代化を図る手段としてチェーン事業(連鎖化事業)を次のように定義しています。

第4条5項 連鎖化事業(主として中小小売商業者に対し、定型的な約款による契約に基づき継続的に、商品を販売し、又は販売をあつせんし、かつ、経営に関する指導を行う事業をいう。以下同じ。)を行う者は、当該連鎖化事業の用に供する倉庫その他の施設又は設備を設置する事業について、連鎖化事業計画を作成し、これを主務大臣に提出して、当該連鎖化事業計画が政令で定める基準に適合するものである旨の認定を受けることができる。

フランチャイズ・チェーンは連鎖化事業の一種とされ、第11条1項にて、次のように定義されます。

第11条1項 連鎖化事業であつて、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの(以下「特定連鎖化事業」という。)を行う者

フランチャイズ契約では商標の使用や経営指導を受ける代わりに、加盟者は本部に対して、イニシャル・フィー(加盟料)とロイヤリティ(経営指導料)を支払うのが通常です。

イニシャル・フィーは契約締結時に支払うもので、ロイヤリティは、契約期間中、売上高のうち一定の割合を支払うものになります。

契約締結時における開示義務

第11条1項では、フランチャイズ契約締結における情報開示義務を本部に課しています。

同条1項 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
1号〜6号 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項
経営の指導に関する事項
使用させる商標、商号その他の表示に関する事項
契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項

また本部がこの規定に従っていないと判断された場合、特定連鎖化事業を行う者に対して従うよう勧告することができる旨を定めています。

独占禁止法におけるフランチャイズ

独占禁止法は私的独占を禁止し、公正な取引を確保するために成立した法律であるため、条文でフランチャイズについて規定しているわけではありません。
公正取引委員会のホームページでは、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法条の考え方について」とするガイドラインを設け、フランチャイズにおける具体的なビジネス行為を契約時と契約後に分けて個別に評価しています。

8つの開示項目

ガイドラインでは、中小小売商業振興法と同様に、本部が事業拡大などのために、加盟者を募る際または契約締結時において開示すべき8つの情報項目を定めています。

情報提示項目 加盟後の商品の供給条件
加盟者に対して行う経営指導の内容、方法、回数、費用
イニシャルフィー(加盟料)の金額、成立、またその返還の有無と条件
ロイヤリティ(本部の商標、商号使用、経営指導などの対価)の金額、算出方法、徴収時期と方法
決済方法、融資利率
損失補償の有無、経営支援の有無
更新、解約の手続き・条件
加盟者の店舗周辺に、本部が別の店舗を出店させる計画の有無(テリトリー権に関する事項)

根拠となる資料の提示

また、独禁法では、本部側に対して、加盟者募集の際、予想売上げ又は予想収益を提示する場合には、類似した環境にある既存店舗の実績など根拠ある事実、合理的な算定方法等に基づくことが必要であり、また、本部は、加盟希望者に、これらの根拠となる事実、算定方法等を示すことが必要としています。

一方、加盟者側に対しては、フランチャイズ・システムに加盟するために、

1 相当程度の投資額が必要となることを理解すること
2 今後、事業を継続して行うことを前提に加盟交渉が行われていること
3 加盟後の事業活動は、一般的な経済動向、市場環境等に大きく左右されること

を考慮しなければならないと理解を促しています。

本部と加盟者の間で発生するトラブル例として、「想像以上に加盟料が高かった」「経営がダメだったらすぐに止められると思っていた」「予想した売り上げに届かない」などのトラブルが多いため、このようなガイドラインが設けられました。

契約後、独禁法違反となる行為

契約後、加盟店は本部から適宜指示を受けて店舗経営をすることになります。

しかし、本部の指示・指導などが営業を的確に実施する限度を超え、加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合、優越的地位の濫用(第2条第9項第5号)に、また、加盟者を不当に拘束する場合、抱き合わせ販売等(一般指定の第10項)または拘束条件付取引(同第12項)等に該当することがあります。

優越的地位の濫用 取引先の制限 加盟者に対して商品・原材料の注文先を、正当な理由なしに、本部が指定する業者とのみ取引させること
仕入数量の強制 加盟者に対して、商品の仕入れ数量などを指示し、実際の販売に必要な範囲をこえ、かつ返品を認めさせず仕入れさせること
見切り販売の制限 加盟者に対して、正当な理由がないのに、品質が急速に低下する商品等の見切り販売を制限し、売れ残りとして廃棄させること
フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更 加盟者に対して、契約内容にない新規事業を無理やり導入させること
契約終了後の競業禁止 加盟者に対して、本部が加盟者に対して提供したノウハウの保護に不必要な地域、期間の競業禁止義務を課すこと
抱き合わせ販売等 相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること
拘束条件付取引 法第二条第九項第四号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること
販売価格の制限 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること