商品価格は本部が決めている?〜フランチャイズオーナーの本音〜

スーパーなどでは閉店時間が迫ると弁当や惣菜の見切り販売が開始されることがあります。通常価格の半額で手に入ることもあり、見切り販売が始まる時間帯を狙って買いに来る消費者も多いといいます。

一方、コンビニでは見切り販売をあまり見かけません。見切り販売をすると本部の取り分が少なくなるためです。セブンイレブンの加盟店オーナーが本部から見切り販売を妨害されたとする裁判事件では、2014年10月、セブン本部の妨害行為の違法性を認め、1140万円の賠償金の支払いを命じる判決が下されています。

しかしながら、見切り販売について難色を示すコンビニチェーンは多く、加盟店オーナーも無言の圧力を感じることが少なくないようです。

果たして商品価格を自分で決めている加盟店オーナーはどれほどいるのか。本記事は公正取引委員会のフランチャイズチェーンにおける実態調査を元に、商品の販売価格について詳細に見ていきます。

加盟店オーナーの半数「本部の推奨価格で販売」

公正取引委員会の調査によると、フランチャイズ加盟店で販売する商品価格について、「本部から推奨された販売価格でのみ販売している」と回答した加盟店オーナーは、コンビニエンスストアでは45.9%、それ以外では51.6%となります。

一方、「本部から推奨された販売価格とは異なる価格で販売することもある」と回答したのは、コンビニエンスストアで51.6%、それ以外では48.4%となりました。

商品の販売価格と本部の指示

コンビニエンスストア コンビニエンスストア以外
本部から推奨された販売価格でのみ販売している 45.9% 54.1%
本部から推奨された販売価格とは異なる価格で販売することもある 51.6% 48.4%

(公正取引委員会資料より作成)

9割近い加盟店が見切り販売の経験あり

次に、見切り販売の経験の有無に関する調査では、「(廃棄リスクを回避するために)見切り販売をしたことがある」と回答した加盟店はコンビニエンスストアでは89.8%、それ以外では93.3%にのぼりました。

見切り販売の有無

コンビニエンスストア コンビニエンスストア以外
見切り販売をしたことがある 89.8% 10.2%
見切り販売をしたことがない 93.3% 6.7%

見切り販売したときの本部の対応

見切り販売をしたことがある(またはしようとした)加盟店オーナーに対して、その時の本部の対応(反応)はどのようだったかを尋ねたところ、コンビニエンスストアでは「推奨価格で販売するよう指導された」が13.4%で最も多くなりました。

次いで、「原価全額が加盟店の負担となる仕組みであるのに、見切り販売をしないよう指導された」11.9%、「値下げ処理をするための端末(システム)への入力方法が、従来よりも煩雑なものに変更された」8.4%、「その他不利益な取扱いがあった又は不利益な取扱いをする旨示唆された」7.0%、「本部のロイヤルティ算定の要素から外すような値下げ処理を行わないようにとの指示があった」6.2%となりました。

見切り販売したときの本部の反応(コンビニのみ)

コンビニエンスストア
推奨価格で販売するよう指導された 13.4%
原価全額が加盟店の負担となる仕組みであるのに、見切り販売をしないよう指導された 11.9%
値下げ処理をするための端末(システム)への入力方法が、従来よりも煩雑なものに変更された 8.4%
本部のロイヤルティ算定の要素から外すような値下げ処理を行わないようにとの指示があった 6.2%
その他不利益な取扱いがあった又は不利益な取扱いをする旨示唆された 7.0%
特段の対応はなかった 79.8%

(公正取引委員会資料より作成)

こういった本部の対応に対し、「受け入れざるを得なかったため受け入れた」とする加盟店が42.6%と最も多く、「受け入れざるを得なかったわけではないが受け入れた」は25.6%でした。また、受け入れた結果、「不利益を被った」とする加盟店は83.3%にのぼります。

一方、「受け入れなかった」と回答した加盟店は31.8%ありました。

コンビニエンスストア
受け入れざるを得なかったため受け入れた 42.6%
受け入れざるを得なかったわけではないが受け入れた 25.6%
受け入れなかった 31.8%

契約更新を拒絶する本部も

見切り販売を行ったことを理由に、契約更新を拒絶する本部も多くいることが明らかとなりました。

「その他不利益な取扱いがあった又は不利益な取扱いをする旨示唆された」の内容では、「契約更新の拒絶」が52.3%、「契約の解消(中途解約)」38.6%、その他47.7%(複数回答)となりました。

見切り販売に関する最高裁判決

最高裁判所は、2014年10月、コンビニ最大手のセブンイレブン・ジャパンの見切り販売妨害事件に関して、被告であるセブン本部の上告を棄却したことで、原告である加盟店オーナーの勝訴が確定しました。

セブン見切り販売妨害事件では、セブンのフランチャイズに加盟するオーナーら4人が、本部から見切り販売をしないよう妨害行為を受けたとして、同社に対して1億3980万円の損害賠償を求めていました。

公取委「見切り制限は『優越的地位の濫用』にあたる」

公正取引委員会は、2009年、セブンイレブン・ジャパンに対して見切り販売の制限行為は独占禁止法の「優越的地位の濫用」(不公正な取引方法(同法2条9項))に該当するとして、排除措置命令を出し、セブン本部もこれを受けてオーナーらに謝罪していました。

不公正な取引行為 第14項 優越的地位の濫用

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。

  1. 継続して取引する相手方に対し、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
  2. 継続して取引する相手方に対し、自己のために金銭、役務その他経済上の利益を提供させること。
  3. 相手方に不利益となるように取引条件を設定し、又は変更すること。
  4. 前三号に該当する行為のほか、取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えること。
  5. 取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。

公取委の行政処分を受けてオーナーらは同社を相手に損害賠償1億4000万円を求める裁判を東京高裁に提訴。高裁は原告側の請求を認めて、セブンイレブン・ジャパンに対して1170万円の支払いを命じるも、同社は上告しました。

加盟店側の勝訴!

セブンイレブン・ジャパン側は、①価格への信頼性を損なう、②同一商品で“一物二価”の不信感、③同一チェーン同士の価格差による価格競争の可能性、④ブランドイメージの失墜につながることを主張して争いましたが、最高裁は上告を棄却。加盟店オーナーらの主張が最終的に認められました

最高裁でも認められた加盟店による価格決定権利。今後のフランチャイズビジネスでは加盟店側の裁量権の拡大が望まれます。