【日本企業も続々参戦?】中南米フランチャイズ事情① 〜ブラジル、ベネズエラ編〜

寿司やラーメンなど日本食ブームを背景に海外に進出する日本企業たち。日本貿易振興機構ジェトロによれば、ブラジル・サンパウロ市で開催されるフランチャイズ見本市は世界2位の規模を誇るとされます。

中南米の多くの国が景気減速、後退に見舞われるなか、成長著しいブラジルをはじめとして、フランチャイズ市場は拡大傾向にあります。アメリカのファストフードや日本の人気ラーメンチェーン店も続々とブラジル入りし、低コスト・低リスクでの事業拡大に力を入れています。

南米経済の約半分を占めるとされるブラジル市場。昨年はリオデジャネイロオリンピックが開催されたにも関わらず、大統領の弾劾を求めて大規模デモが発生するなど、国内政治は混乱を極め、経済はマイナス成長となっていました。

しかし、ルセフ前大統領の退陣により、政治の不透明感が解消された結果、2017年は明るい見通しとされており、市場の期待感は高まりつつあります。

本記事では、ジェトロ「中南米フランチャイズ業界の動向」をもとに、ブラジル、ベネズエラ、アルゼンチン、チリ、コロンビア、ペルー、メキシコの7ヵ国におけるフランチャイズ事業を詳細に見ていきます。

急成長する中南米フランチャイズ市場

2000年代半ばまで好調だったブラジル経済。2010年代に入ってからは減速し、2015年、2016年はマイナス成長となっていました。ルセフ前政権の失策や汚職問題により見込まれていたオリンピック景気も不発に終わり、景気は後退しました。

しかし、新政権に対する期待感と高金利政策により国民の購買力も回復。日本企業の進出も相次ぎ、ブラジル市場は景気拡大に向けた準備が整った状況と言えます。

(昨年9月に就任したテメル大統領)

ブラジルフランチャイズ市場、4.3兆円

ジェトロによると、2015年のブラジルのフランチャイズ市場規模は、前年比8.3%増加となる1,396億レアル(約4兆3,276億円)となりました(ブラジルフランチャイズ協会発表数値)。

また、GDP成長率はマイナス3.8%となり、過去20年で最悪を記録するも、フランチャイズ市場は堅調に推移し、2011年以降は拡大を続けています。

フランチャイズ市場の推移

市場規模
2011年 3.1兆円(889億レアル)
2012年 3.7兆円(1073億レアル)
2013年 4.1兆円(1188億レアル)
2014年 4.5兆円(1289億レアル)
2015年 4.9兆円(1396億レアル)

(ジェトロ公表資料より作成)

外食や小売りが好調

業態別では、「ビジネスとサービスおよびその他の小売り」が21.1%、次いで、「外食」20.0%、「スポーツ・健康・美容およびレジャー」18.0%と続きました。
2015年は、全フランチャイズ店舗のうち、新規オープンの店舗が14.7%だったのに対し、閉店した店舗は4.4%でした。

フランチャイズ店舗を地域別に見ると、サンパウロやリオデジャネイロなど大都市部に71.4%が集中しています。都市別ではサンパウロ市15.4%が最も多く、次いでリオデジャネイロ市6.8%となりました。

新規フランチャイジー増加により新規雇用数は前年比8.5%の増加となる9万人に達しました。

世界2位を誇るブラジル・フランチャイズ見本市

25回目となるフランチャイズ見本市はサンパウロ市で6月に開かれました。入場者数は前年比4.0%増の6万5500人で、世界各国のフランチャイズ企業も参加。ブラジルフランチャイズ協会のフランコ会長は、

「ブラジルのフランチャイズ市場は成熟しており、多くのフランチャイザーを魅了する市場となっている。今後、国内経済が回復すれば、同市場でより大きな成長を見込めるだろう」

と述べました。

現在、ブラジルではサンパウロを中心に多くの日本企業が進出。最近は飲食業のなかでもラーメンチェーンの出店が多く、今年5月には九州出身企業としてはじめて「一幸舎」が出店したばかりです。

ブラジル人にラーメンが好まれる理由として、JTBグループのLAPITA(ラピタ)は、

「1.イタリアンパスタなど良く食べなれている、パスタが好きである。2.スープ食文化が浸透している。3.味付けの嗜好は塩辛いのが好き。4.気楽に、気取る事なく店に入れる、他物価と比較しても安い。5.50年近く現地では即席麺が販売されておりラーメンの食べ方に慣れている、軽食としてsopa com macarrao (麺入りスープ)のコンセプトを理解し易い」(参照:ラピタ

と分析。

最近は、輸入自由化の恩恵により質の高い醤油や味噌などを現地調達できるため、味のレベルも上がっているとのことです。

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(活況だったABFフランチャイズエキスポ2016)

経済危機のベネズエラ、フランチャイズは順調?

原油価格の暴落によりインフレ(※)が深刻化し、食糧不足や医療不足に追い込まれているベネズエラ。独裁政治色が強まるマドゥロ政権に対しては、市民が大規模デモを起こすなど、政局は混乱しています。さらに、8月には米国政府がベネズエラに対し最大規模の金融制裁に踏み切るなど、両国の関係悪化が懸念されます。

(民衆デモと鎮圧にあたる軍と警察)

ベネズエラのフランチャイズ市場

資料によると、同国におけるフランチャイズ総店舗数は1万2476店、従業員数は9万7962人におよぶとされます。

業種別の企業数をみると、飲食業が最も多く158社、次いでアパレル103社、美容30社、建築・家具27社、薬局24社、自動車サービス21社、電信・配達・印刷16社、食糧・飲料流通14社、教育13社、広告・通信13社、洗濯13社、不動産9社と続きました。

業種 企業数
飲食業 158社
アパレル 103社
美容 30社
建築・家具 27社
薬局 24社
自動車サービス 21社
電信・配達・印刷 16社
食糧・飲料流通 14社
教育 13社
広告・通信 13社
洗濯 13社
不動産 9社

(ジェトロ公表資料より作成)

関係悪化でも米国企業が最多

米国・ベネズエラ両国の関係が悪化するなか、フランチャイザー企業を国籍別にみると、米国企業が最多の103社となります。

フランチャイザーのうち、ベネズエラ資本は345社、外国資本は208社。外国資本のなかでも米国が最も多く、次いでスペイン28社、ブラジル11社、イタリア10社、フランス9社、アルゼンチン7社、コロンビア6社、英国6社、カナダ4社、ドイツ3社、スイス3社と続きます。

企業数
米国 103社
スペイン 28社
ブラジル 11社
イタリア 10社
フランス 9社
アルゼンチン 7社
コロンビア 6社
英国 6社
カナダ 4社
ドイツ 3社
スイス 3社

従業員数でも飲食が最多

ベネズエラ国内の民間就業者数が1034万人であることから、フランチャイズ企業による雇用者(9万7962人)は全体の約1%を占めています。

なかでも飲食店の3万1017人が最も多く、次いで電信・配達・印刷1万3803人、薬局9055人、食糧・飲料流通8620人、自動車サービス7478人、アパレル5751人、建築・家具4723人、美容2802人、ホテル2734人、洗濯1687人、教育768人と続きます。

業種 企業数
飲食業 31017
電信・配達・印刷 13803
薬局 9055
食糧・飲料流通 8620
自動車サービス 7478
アパレル 5751
建築・家具 4723
美容 3522
ホテル 2802
洗濯 1687
教育 768

(ジェトロ公表資料より作成)

現在ベネズエラにおける物価上昇率は800%に達し、IMF(国際通貨基金)の試算では今年度末までに2200%に達すると見込まれている。