フランチャイズ、個人と法人のどちらで加盟すべき?

脱サラしてフランチャイズチェーンに加盟する個人もいれば、事業拡大のために会社組織として加盟する経営者もいます。加盟形態では、「個人」による加盟のほうが圧倒的に多いですが(日本政策金融公庫調べ)、近年、法人による加盟も活発化しています。個人で加盟する場合と、法人で加盟する場合とでどのような違いがあるのか、メリットは何かを詳しく見ていきましょう。

個人or法人による加盟に違いはある?

経営未経験者でも独立を後押してくれるフランチャイズ。有名チェーンが持つ経営ノウハウを活用できることが最大の魅力でもあります。
加盟形態別に見ると、個人と法人とではフランチャイズに加盟する理由はことなります。

個人の場合は、前述の通り、独り立ちする際の強力な味方という側面が強いですが、法人の場合は、経営の多角化や新規事業の開拓といった狙いになります。

個人の場合

脱サラ後、「商売がしたい」「何かお店を始めたい」「自分の会社を持ちたい」と思っても簡単に始められることではありません。会社を設立するなら開業資金が必要になりますし、綿密な事業計画書の作成、仕入れルートの開拓など全てを自分自身の力だけでしなくてはなりません。

しかし、フランチャイズに加盟することで、経営初心者でも比較的に楽に事業を軌道に乗せることができるでしょう。本部が持つ強力なブランド力と経営ノウハウを活用すれば、多店舗展開もさほど苦ではないと言われています。

ただし、フランチャイズシステムを活用するからといって、創意工夫を何もしなくていいという訳ではありません。
フランチャイズではあらかじめ仕入れ先が決められているなど制約が多いものの、本部が指示するままに経営していては会社員と変わりません。大切なのは自分が何をしたいのか、どのような業界で力を発揮したいのかなど将来のビジョンを明確にすることです

その上でフランチャイズチェーンに加盟するメリットは何かを考えて、FC本部を慎重に選ぶことが重要となります。

法人の場合

すでに何らかの事業を営んでいる法人が、フランチャイズに加盟する理由は、「新規事業の開拓」「事業拡大」「経営の多角化」などが考えられます。

日本政策金融公庫によれば、企業全体のうちフランチャイズに加盟しているのは7.1%とされます。フランチャイズ加盟率は、2012年以降、増加傾向でしたが、2014年からは横ばいとなっています。

フランチャイズ加盟企業の推移

加盟率
2011年 7.1%
2012年 5.7%
2013年 5.8%
2014年 7.3%
2015年 7.1%
2016年 7.1%

法人がフランチャイズに加盟することのメリットは、経営ノウハウの提供により新規事業への参入障壁の低下が考えられます。イチから新規事業を立ち上げ、時間とコスト(費用)をかけて事業を育てていくよりも、効率的に利益を上げることができ、時間の節約にもなります。さらに一定期間、雇用を確保することでき、事業を売却するなど投資回収を行うことができます。

企業は、関連のある分野でフランチャイズシステムを活用することで、事業拡大を図り、将来的な成長につなげることができます。

ただし、法人が加盟する際にも契約内容をよく精査するなどの注意が必要です。公正取引委員会が公表している調査報告書によれば、「本部の開示内容と実際の内容とで異なっていた事項」(複数回答)として最も多かったのが、「予想売上げや収支モデルの額」で全体の半数以上を占めました。

このほか、「店舗周辺の地域に本部の直営店又は他の加盟店を出店させる可能性の有無」24.0%、「ロイヤルティ(算定方法・額、徴収の時期、徴収の方法等)」19.3%なども上位にあがりました。売り上げにも直接影響してくる項目なので、よく確認しておきましょう。

また、将来的な事業売却を予定しているなら、それも可能かどうかを本部とよく話し合っておく必要があるでしょう。

コンビニ加盟形態は「個人加盟」が圧倒的多数

フランチャイズへの加盟状況を確認します。公正取引委員会調査報告書(2011年)によると、コンビニエンスストアを除いたフランチャイズに加盟する形態は個人(46.2%)、法人(53.8%)となりました。

法人の内訳は、「500万円以下」(11.5%)、「500万円超1000万円以下」(11.5%)、「1000万円超」(30.8%)となります。

コンビニでは「法人加盟」は少数派

また、コンビニエンスストアに限れば、個人(81.0%)が法人(19.0%)を圧倒します。
法人の内訳は、「500万円以下」(12.3%)、「500万円超1000万円以下」(5.3%)、「1000万円超」(1.4%)となります。

ところが、加盟後の事業形態では、約3分の1は加盟後に法人化しています。
コンビニエンスストア以外ではおよそ半数が法人かしている状況です。

加盟前と加盟後の事業形態比較

【加盟前】

コンビニ コンビニ以外
個人 81.0% 46.2%
法人 500万円以下 12.3% 11.5%
500万円超1000万円以下 5.3% 11.5%
1000万円超 1.4% 30.8%

【加盟

コンビニ コンビニ以外
個人 55.0% 23.1%
法人 500万円以下 35.5% 30.8%
500万円超1000万円以下 7.4% 15.4%
1000万円超 2.1% 30.8%

法人化までには平均7年?

加盟した個人が法人化するまでに要した年月を調査した経産省の報告書(フランチャイズ・チェーン経営実態調査)によると、小売業は約6年、外食業は約3年、サービス業は約8年で、全体だと平均7年となっています。

500万円未満での開業が増加

独立の際に必要となる開業資金。一般的にはいくら必要になるのでしょうか。

日本政策金融公庫によると、開業費用の分布では「500万円未満」が最も多く35.3%でした。ついで「500万円〜1000万円未満」30.9%、「1000万〜2000万円未満」20.5%、「2000万円以上」13.3%と続きました。平均は1223万円で、中央値は670万円でした(いずれも2016年度データ)。

日本政策金融公庫は、「開業費用の平均値は2015年度に比べて18万円増加したが、2008年度以降、横ばいの状態となっている」と述べています。

開業費用

500万円未満 500万円〜1000万円未満 1000万〜2000万円未満 2000万円以上
2008年度 35.4% 29.1% 21.6% 13.9%
2009年度 34.3% 28.3% 21.6% 15.8%
2010年度 38.1% 28.5% 17.9% 15.5%
2011年度 39.8% 26.6% 19.2% 14.5%
2012年度 35.4% 31.1% 19.2% 14.3%
2013年度 34.7% 31.0% 21.1% 13.2%
2014年度 32.5% 31.8% 20.5% 15.2%
2015年度 32.8% 31.6% 21.8% 13.8%
2016年度 35.3% 30.9% 20.5% 13.3%

金融機関からの平均借入額931万円

次に、開業時における資金調達額を見ると、昨年度の平均は1443万円で前年度より68万円増加しました。平均額は2008年以降横ばいで推移しています。

「自己資金」減少、「借り入れ」増加の傾向

資金調達額の内訳では、「金融機関からの借り入れ」が最も多く平均931万円でした。このほか、「自己資金」320万円、「配偶者・親・兄弟・親戚」84万円、「友人・知人等」56万円となりました。

資金調達の内訳

自己資金 配偶者・親・兄弟・親戚 友人・知人等 金融機関からの借り入れ
2008年度 374万円 100万円 72万円 793万円
2009年度 398万円 124万円 65万円 798万円
2010年度 364万円 141万円 70万円 827万円
2011年度 356万円 97万円 51万円 840万円
2012年度 369万円 112万円 47万円 855万円
2013年度 327万円 95万円 50万円 833万円
2014年度 350万円 100万円 45万円 928万円
2015年度 311万円 110万円 53万円 866万円
2016年度 320万円 84万円 56万円 931万円

近年は、自己資金は減少し、「金融機関からの借り入れ」は増加する傾向があります。