【前代未聞?】ラーメンチェーンの幸楽苑がステーキ屋とフランチャイズ契約締結

法人がフランチャイズに加盟することで事業拡大を目指すのは珍しくありません。しかし、幸楽苑が新業態としてステーキの販売を始めるというニュースは世間を騒がせました。

今年10月、ラーメンチェーンを展開する幸楽苑は、「いきなり!ステーキ」で有名なペッパーフードサービスとフランチャイズ契約を結んだことを発表。「いきなり!ステーキ」はステーキ専門の立ち食いスタイルが有名で、低価格ながら本格的なステーキを提供していることで人気急上昇中の外食チェーンです。幸楽苑は近年経営不振から店舗閉鎖が相次いでおり、事業の立て直しに向けて新たな業態にチャレンジするようです。

幸楽苑の経営不振

現在全国32都道府県で561店舗を運営する大手ラーメンチェーンの幸楽苑は、1954年に福島で創業されました。一部上場を果たしたのは2003年で、一昨年からは幸楽苑ホールディングスとして持株会社(会社の株式を保有することを目的とした親会社)に移行しました。

主力商品の販売終了

幸楽苑といえば290円の中華そばが定番商品となっていましが、2015年、販売を終了させます。代わりの主力として520円の「醤油ラーメン司」に切り替えました。人件費の高騰や人手不足を背景とした大体な方向転換でしたが、1人当たりの客単価は向上します。専門家の間では一定の効果が見られるとされていました。

約6億円の損失

しかし、これまで順調に出店数を重ねるも今年11月に52店舗の閉鎖を発表します。同月10日に発表された平成30年3月期第2四半期決算では、店舗閉鎖に伴う減損損失4億700万円と、店舗閉鎖損失引当金繰入額1億2300万円を特別損失として計上します。また当期損失としては6億4000万円を計上しました。

「経営資源の効率化及び収益性の向上を図るべく、出店エリア・出店形態等の見直しを検討してまいりました。(今後は)長期的な成長が見込めない52店舗の閉鎖を決定し、将来の成長が見込まれる出店エリア・出店形態等に経営資源を集中していく所存です」(幸楽苑ホールディングスより)

経営成績の説明として天候不順や昨年10月に起きた異物混入による全店一時閉鎖が影響したと述べました。

今後は赤字続きの不採算店舗を閉鎖し、経営再建を図る方針です。

フランチャイズ事業も不調

幸楽苑はラーメン事業のほか、全18店舗(国内16店舗、海外2店舗)のフランチャイズ展開を行っています。

しかし、売上高は前年同期比3.5%減となる8億7000万円、営業利益は前年比17.6%減の1億2000万円で、全体的な業務改善が求められていました。

いきなり!ステーキの好調ぶり

一方、「いきなり!ステーキ」は急成長を続ける立ち食いスタイル人気ステーキチェーン店です。本部であるペッパーフードサービスは2013年、東京・銀座に1号店を出店します。これがたちまち「肉好き」の間で話題を呼び、わずか4年で164店舗まで拡大しました(2017年10月末時点)。11月は早くも新たに9店舗の出店を発表。既存店昨年対比売上では5年連続で100%を達成するなど快進撃が続いています。

ペッパーランチと外食全体の既存店昨年対比売上

(ペッパーフードサービス公表資料より)

経営悪化からの復活

ペッパーフードサービスは2009年、7店舗で病原性大腸菌O-157の食中毒事故発覚を機に業績が悪化します。しかし、その後は新商品がヒットしたこともあり2011に黒字に転化。2013年12月に「いきなり!ステーキ」を創業し、今日の快進撃に至ります。

いきなり!ステーキ店舗数推移

既存店昨年対比 店舗数
2017年1月 178% 115店舗
2017年2月 153% 115店舗
2017年3月 147% 119店舗
2017年4月 180% 122店舗
2017年5月 177% 125店舗
2017年6月 195% 129店舗
2017年7月 120% 142店舗
2017年8月 118% 143店舗
2017年9月 119% 143店舗
2017年10月 117% 145店舗

(ペッパーフードサービス公表資料より)

売上高330億超え

ペッパーフードサービスの平成29年12月期第三四半期決算資料によると、通期の業績予想は、売上高334億8500万円、営業利益21億8500万円、経常利益21億6400万円となります。

現在、年間40店舗出店を目標に掲げている「いきなり!ステーキ」事業。今後の方針については、

「人手不足が深刻化するなか人件費も上昇し、厳しい経営環境が続いているが、年間60店舗出店を目標に(ステーキ専門店の)『ペッパーランチ』および『いきなり!ステーキ』の出店拡大に取り組んでいく」(ペッパーフードサービスより)

としています。

ステーキ、ハンバーグは絶好調?

ステーキ店の売上が好調なのはいきなり!ステーキだけではないようです。マーケティング会社の富士経済が発表した外食産業市場調査によると、「ステーキ・ハンバーグレストラン(西洋料理)」の今年の市場規模は昨年比105.8%となる1186億円になると見込まれています。

富士経済は、市場規模が広がっていることについて、「ペッパーフードサービスが業態唯一の100店舗を突破するなど、市場活性化に大きく貢献した」と述べました(参照:富士経済)。今後も肉需要の高まりに伴う新規参入の増加が期待されています。

このほか、前年比で拡大した業態は、「ファミリーレストラン」1兆3212億円(0.1%増)、「東洋料理」1兆4006億円(0.1%増)、「エスニック料理」1366億円(0.9%増)、「宿泊宴会場」3兆7941億円(0.3%増)となりました。最も高い伸び率を見せたのは、やはり「西洋料理」で1.0%増となる7891億円でした。今後については、富士経済は「いきなり!ステーキがロードサイドへの出店を進めていることでステーキ・ハンバーグレストランが続伸し、西洋料理市場は拡大するだろう」としました。

一方、対昨年比で縮小した業態は、「料飲店」5兆7822億円(▲0.8%)、「喫茶」1兆4246億円(▲0.1%)、「日本料理」2兆6049億円(▲0.6%)の3つのみとなりました。「日本料理」が縮小した理由については、後継者不足、人手不足を背景に老舗個人経営店の閉店が相次いだことが挙げられました。しかし、そのような中でも「すきやき・しゃぶしゃぶ」「もつ鍋」などは肉需要の高まりを受けて2017年市場規模は前年比5.4%増加となる1329億円となる見込みです。

【外食】業態別の市場規模

2017年市場規模(見込み) 前年比
料飲店 5兆4,822億円 501億円
ファミリーレストラン 1兆3,212億円 14億円増
喫茶 1兆4,246億円 16億円
西洋料理 7,891億円 77億円増
日本料理 2兆6,049億円 148億円
東洋料理 1兆4,006億円 11億円増
エスニック料理 1,366億円 12億円増
宿泊宴会場 3兆8,046億円 105億円増

フランチャイズ契約締結で復活なるか

幸楽苑ホールディングスとペッパーフードサービスは11月、共同記者会見を開き、「いきなり!ステーキ」のフランチャイズ契約を交わしたことを明らかにしました。

新業態に参入することとなった幸楽苑は、

「フランチャイズ契約締結により、ステーキ業態の優れた業態特性と、本物志向かつリーズナブルな価格で提供する『いきなり!ステーキ』への業態転換を図り、わが社で構築されたドミナントエリア内での自社競合を回避しつつ、経営効率を改善し、長期的・安定的に企業価値を向上させていく」

と今後の展開を述べました。

一方、ペーパーフードサービスは幸楽苑の出店力を活用しつつ、新規出店も狙うとしました。幸楽苑による1号店はすでに福島県福島市に出店されました。異なる業態同士のフランチャイズ契約締結に対して、果たしてどのような化学反応が起こるのか。今後の両者の動向に注目が集まります。