直営店とフランチャイズチェーンの違いって何?

直営店とフランチャイズチェーンの違いを正確に説明できるでしょうか。これらの言葉は、コンビニや飲食店などのフランチャイズビジネスを展開する店舗運営の方法の違いを表しています。

フランチャイズは、現在非常に身近な存在です。セブン・イレブンやローソンなどのコンビニはフランチャイズの中でも代表的な存在です。2018年のコンビニの売上げは11.2兆円でフランチャイズ売上シェア42%と大半を占めています。また、意外なところかもしれませんが、ベスト電器マツヤデンキなどの家電量販店もフランチャイズが多く活躍している業界になります。

家電量販店が含まれる「家具・家電・家庭用品関係小売」の2018年度の売上げは2.2兆円となっています。その他、外食店や小売店などでたくさんのフランチャイズビジネスが展開されています。(参照:日本フランチャイズチェーン協会「フランチャイズチェーン統計調査」より)

そこで今回は、身近な存在であり独立する場合に比較的簡単かつ安全な方法であるフランチャイズの店舗運営方法の代表格である直営店とフランチャイズチェーンについて、解説とメリットとデメリットと比較をしていくので、参考にしてみてください。

直営店とは

直営店とは

直営店とは、フランチャイズ本部がその店舗の運営を直接行っています。そのため、店舗だけを経営するオーナーや事業主が直営店にはいません。また、働いてもらう従業員やアルバイトスタッフも、本部を運営する会社が契約することになります。また、直営店だけで店舗展開を行うことをレギュラーチェーンやコーポレートチェーンといいます。

フランチャイズチェーンやレギュラーチェーンの共通点は、1つの店舗名で複数の店舗があることです。例えば、自分で起業したオリジナルの飲食店の経営が軌道にのって、隣の街にもう1店舗同じ名前で同じサービスを提供する飲食店を開業することをするとします。この2店舗目の店舗は直営店ということができます。

●規模の利益=スケールメリットとは
店舗を増やしていくことを多店舗展開=チェーン展開と言います。そして、多店舗展開を行う目的は、一言でいえば『規模の利益=スケールメリットの追求』です。

店舗数を増やしていくことで、客数や商品の販売数を増やしていくことが期待できます。販売数を増やすことができると、商品や食材などの仕入れを増やすことができます。仕入れ量を増やすことができると、仕入れ先との交渉力が強くなりより良い条件での仕入れができます。

そして、条件が良くなれば利益の増加や販売価格を下げることで売り上げを伸ばすこともできます。これが規模の利益=スケールメリットです。

その他の代表的な規模の利益=スケールメリットは、以下の通りです。

代表的な規模の利益=スケールメリット

商品開発コストの削減 新商品を販売する場所や店舗が増えれば、商品開発のコストを分散することができます。
物流効率の改善 商品を配達するのも店舗数が増えれば、それだけ物流効率が改善できて、物流費用を全体として下げることができます。
知名度の向上 店舗数の増加は商圏を広げることに直結しますが、地域の中で主要な場所に出店などをすることで知名度が上がります。そして知名度が上がることで、広告自体の必要性の減少や広告効果が強化されます。また、知名度が上がることで採用の難度を下げることができるので採用コストを削減できます。

多店舗展開

多店舗展開においては、店舗数を増やして売り上げを増やしていくことが求められます。この多店舗展開の代表的な方法が、以下の3つになります。

  1. ①レギュラーチェーン
  2. ②フランチャイズチェーン
  3. ③ボランタリーチェーン

ここでは、レギュラーチェーンとボランタリーチェーンについて取り上げます。(フランチャイズチェーンは、次章で取り上げます。)

●レギュラーチェーンとオペレーション

レギュラーチェーン

同じ資本で経営されている複数の店舗が、中央本部が指示する運営方法で各店舗を直接的にコントロール下において同一の商品やサービスの提供を行う多店舗展開形態です。同じ資本ということは、中央本部と店舗が同じ会社組織に属するため、その指示命令が短期間に行き届きやすい特徴があります。また、本部と店舗は同一の経営の為フランチャイジーのような本部に支払いする手数料等は基本発生しません。

このレギュラーチェーンの各店舗が直営店になります。そのため、各直営店の営業目標や売り上げ目標などは本部の指示によって設定され、販売に専念することが一般的です。また、経営効率を高めるために、新たなシステムなどを利用して業務効率を高めることを本部の指示で行います。

●ボランタリーチェーン

ボランタリーチェーン

ボランタリーチェーンは、商品や原材料を共同仕入れすることを目的として同一の事業者が組織化した事業形態を言います。フランチャイズチェーンやレギュラーチェーンと比較すると知名度が低いため、イメージがつきにくい傾向があります。

ボランタリーチェーンを展開している本部で知名度が高いのは、ヤマザキショップ(Yショップ)があります。ヤマザキショップのチェーン本部は、パンの製造・販売で知られる山崎製パン株式会社です。山崎製パンは、パンを卸すことで利益を得ることができます。また、パンを店舗まで運ぶ手間もヤマザキショップが増えれば増えるほど流通効率が改善できます。そのため、ロイヤリティが他のコンビニフランチャイズと比較すると圧倒的に安く、また自由度も高いという特徴を持った運営をしています。

一方で、ヤマザキショップを運営する各事業者は、山崎製パンという上場会社の知名度が活用できることや仕入れの効率を高めることができるメリットを得ながら、支払うべきロイヤリティを抑えることや現在問題になっている24時間365日の営業などの規制に縛られることがない独自運営ができています。

ボランタリーチェーンはその他に、日本全国に1,600店舗を展開する全日食チェーンや、全国約4,000店舗のスーパーマーケットを展開するシジシージャパンなどが有名です。

直営店の特徴

直営店の特徴

直営店の特徴は、よりよい店舗をチェーン本部と共に作り上げていく点にあります。前述のとおり、直営店は本部と店舗は単一資本で同一法人または親会社と子会社の関係であることも多くあります。そのため、本部は直営店全体の売上げや利益に責任が発生します。また、各直営店ではその店舗の売上げや利益などに責任を持ちます。

会社組織でも、同じ指示を受けても異なる結果を出す支社や支店のスタッフや、本社に対して支社や支店にいるからこそできる有益な情報提供をするスタッフがいます。直営店を任される責任者も同様で、スタッフにも優劣が出てきます。これらの差を分析して、本部は指示やマニュアルの質を改善することができます。

また、直営店は本部の多店舗展開の方向性によって、その役割が異なってくるといえます。本部が望む多店舗展開にフランチャイズチェーンを活用したい場合には、直営店はモデルケースの役割が強くなります。具体的には以下の役割等を担います。

  • ・売り上げや利益を伸ばす効率的な運営方法の実現とノウハウの蓄積
  • ・スタッフ教育や指導方法の確立
  • ・新業態や新商品や新システムなどの新しい運営へのチャレンジと効果検証
  • ・販売動向のデータ収集

多店舗展開を直営店のみのレギュラーチェーンで進めたいと考える場合には、増益や新規顧客の獲得などの役割がより色濃くなっていきます。同一資本であるため、各直営店が利益を出していくことで、次の直営店の新規開設につながっていきます。つまり、既存の直営店の利益状況で、スケールメリットを得るスピードが変わってくるという特徴があるため、より利益を求める傾向が強くなります。

直営店の新規店舗出店方法

直営店が新しい店舗を出そうとする時には、本部と店舗が同一資本であるため、本部と直営店を経営する会社に店舗出店資金が必要になります。自己資金が十分にない場合には、借入などを行って資金を調達します。このため、直営店で多店舗展開を実施していくと借入が増加していくことが一般的です。

また、新規出店する直営店で働くスタッフは本部が調達します。すでにある既存店のスタッフを新規出店する直営店に充てることも可能ですし、新たに雇用することもできます。一般的には、既存店で一定期間経験を積んだスタッフが新規出店した店舗を任されることになります。また、アルバイトスタッフなど足りないメンバーは雇用することになります。そのため、直営店が増えれば増えるほど、雇用する社員などが増えていきます。

既に既存店舗でオペレーション経験があるメンバーが店舗運営を行う点で、直営店の新規店舗の運営は開店直後から安定することが多くあります。また、本部が直接的な指導・指示を行うことができるため、本部が望むレベルでの店舗展開が行いやすいという面もあります。そして、スタッフのスキルが不足していると本部が判断する場合には、人員のてこ入れや人員配置の見直しなども行うことができます。

また、出店場所も本部が決定することになります。前述のとおり、直営店方式の多店舗展開においては店舗の販売やサービスを行って受け取る売上によって、会社の利益は支えられています。そのため、新規店舗を出店する場合には、出店費用を賄える売上を上げる必要があります。

店舗展開において重要になるのは、どこに出店するかということです。出店する際には、1店舗で提供できるサービス量に対して、出店エリアにいる顧客になりうるターゲット層が十分かどうかを見極める必要があります。また、出店エリアにライバルとなる同業他社がどの程度存在するか、エリアの将来的な発展展望なども重要になります。

一方で、既存の店舗とあまりに離れてしまうと、せっかくの多店舗展開の効果が十分に発揮しません。また、あまりに近い場所に出店すると、エリアのターゲット層が増えずに新規のお客様の獲得につながらずせっかくの複数店の効果が下がってしまいます。そのため、一定程度エリアをひろげながらも全体的な地域を限定して集中して店舗を展開しくのが一般的です。例えば、東京都新宿区に絞って店舗展開するなどになります。

●ドミナント戦略

特定地域に絞って店舗を出店していくことをドミナント戦略と言います。特定のエリアに限定して集中して自社の店舗を出店することで、そのエリアでの知名度が格段に向上します。その結果、ターゲット層を自分の店舗の顧客にすることができます。そうすれば、ライバル企業がその地域に出店することのハードルが高くなります。

ドミナント戦略には、その他に以下のような効果があります。

ドミナント戦略

効率的な店舗展開 エリア特性や潜在的なターゲット層がどのくらいいるのかなど、出店に必要な情報が分かっている地域への出店になるので、効率的な出店が可能です。
物流コストを抑えられる 店舗同士の距離が近いことで、運送費用や時間を短縮できます。特に生成食品を取り扱う店舗においては、運送時間の短縮はサービス品質にも大きく影響します。
店舗運営コストを抑えられる 経営者や店舗運営指導スタッフによる臨店効率が上がり、その結果店舗運営が効率的になります。

フランチャイズチェーン

フランチャイズチェーン

フランチャイズチェーンは、前述の多店舗展開の一つの施策になります。また、レギュラーチェーンやボランタリーチェーンと比較すると、多店舗展開において最もメジャーな手法です。

フランチャイズチェーン

フランチャイズチェーンは、フランチャイズシステムと呼ばれる販売網を構築する店舗網を言います。フランチャイズチェーンは、フランチャイズチェーン全体を取り仕切る本部であるフランチャイザーと、その本部から店舗運営に必要な商標や運営ノウハウや商品などの提供を受けて実際の店舗運営を行うフランチャイジーがいます。フランチャイズ本部とフランチャイジーは、それぞれ別の資本で別会社であることが一般的です。そのため、店舗運営に必要なものを利用できるフランチャイズ契約の対価としてロイヤリティ=手数料を支払いする仕組みになっています。

つまり、フランチャイズによる店舗出店における開業資金は店舗運営を行う事業主が用意する必要があります。そのため、直営店で多店舗展開するレギュラーチェーンより多くの資本が集まりやすいという点が大きな差になっています。

そのため、前述のセブン・イレブンやローソンを代表とするコンビニエンスストアなどチェーン展開による多店舗展開が大半になります。チェーン展開とは、ブランド名などを統一し同じサービスを展開する複数店舗を出店・運営していくことを言います。店舗の外観や内装ならびにスタッフの服装など見た目も統一し、取扱商品やサービスも概ね統一していくことで、同ブランドの店舗であれば同じサービスが受けられることを顧客が期待するのがチェーンです。

フランチャイズの収益構造

フランチャイズ本部とフランチャイズ店は、収益の仕組みが全く異なります。簡単なのは、フランチャイズ店舗側です。フランチャイズ店の利益は、お客様からいただく商品やサービスの対価が売上になり、同じく店舗運営に必要なコストを差し引けば良いです。この部分は、一般的な飲食店や小売店と同じです。具体的には、1杯800円のラーメンを月間で3,000杯売った売上240万円から月間費用合計200万円(店舗家賃や仕入れ代金やスタッフの給与や光熱費など)を引いた金額が利益になります。ただし、上記コストの中にフランチャイズ手数料が含まれている点は一般的な飲食店や小売店とフランチャイズ店が異なる点になります。

一方、フランチャイズ本部の利益の仕組みは、フランチャイズ店のように直接お客様の商品やサービス対価を得るわけではありません。フランチャイズ本部の売上の柱は、以下の大きく3つになります。

フランチャイズ本部の売上の柱

  1. ①加盟金(研修費等を含む)
  2. ②ロイヤリティ・手数料
  3. ③商品卸代金や紹介手数料など

なお、これらのフランチャイズ本部の利益はフランチャイズ店舗が支払いをするものです。そのため、フランチャイズ店舗から見た場合には、これらはフランチャイズ契約を行ううえでの費用とみなすことができます。

①加盟金(研修費等を含む)

加盟金は、フランチャイズ本部とのフランチャイズ契約を締結したタイミングで一般的には発生します。加盟金は、フランチャイズ本部が所持・管理する商標やビジネスモデルやその運営ノウハウを利用する対価です。つまり、フランチャイズ店はこの加盟金を支払することでフランチャイズ店を開業することができます。

なお、フランチャイズ店は加盟金を開業資金から工面することが多いため、高額の加盟金になると工面が難しくなります。そうなってしまうと、フランチャイズ店を増やすことで多店舗展開によるメリットを高めることができるフランチャイズ本部の利益と相反してしまいます。そのため、加盟金の金額設定を抑えることや分割支払いを受けるなどを行っているフランチャイズ本部もあります。

②ロイヤリティ・手数料

フランチャイズ店舗を運営できる期間に毎月発生するのが、ロイヤリティになります。店舗運営サポートや事業ノウハウに基づくアドバイス、ブランドロゴマークの利用などのフランチャイズ店舗経営に必要な継続的なフランチャイズ本部によるサービスの対価にあたります。

ロイヤリティの計算方法は、フランチャイズ契約毎に異なります。定額の場合と売上や粗利益額に応じて変動する場合もあります。ロイヤリティはフランチャイズ店舗にとっては必要経費ではありますが、フランチャイズ契約が継続する期間中は基本的には常に発生し続けるため、経営には大きな影響があります。そのため、あまりに高額なロイヤリティはやはり敬遠されます。また、売上に応じてロイヤリティが決まる場合には、最終的には利益が出ないにもかかわらずロイヤリティを請求されることもあるため、考慮が必要です。

ロイヤリティの相場は、業界によって異なっています。業界によって異なるのは、飲食業などの商品原価が高いものはロイヤリティが低くないとフランチャイズ店舗の利益が出にくくなります。一方で、サービス業は原価が掛からないもしくは極めて低い場合にはロイヤリティが高くてもフランチャイズ店舗の利益が残りやすいためです。代表的な業界のロイヤリティの相場は以下のようになっています。

業界 ロイヤリティ変動相場 ロイヤリティ固定相場
飲食業 売上×3~10% 3~10万円
サービス(学習塾など) 売上×10%~30% 3~12万円
サービス(エステなど) 売上×3~8%

また、フランチャイズの代名詞ともいえるコンビニのロイヤリティは、店舗の建物や土地をフランチャイズオーナーが用意する場合には、ロイヤリティが低く設定されます。一方で、店舗建物や土地をフランチャイズ本部が用意する場合には、ロイヤリティが高く設定されます。その結果、営業利益×30~60%という幅のある設定になっています。

なお、適切なロイヤリティの設定はフランチャイズ店舗の利益増大がフランチャイズ本部の利益増大に連携します。そのため、フランチャイズ本部がフランチャイズ店舗の利益向上に対して本気で取り組む良い関係性構築に寄与します。

③商品卸代金や紹介手数料など

飲食店や小売店のフランチャイズ店舗は、店舗で取り扱う食品や商品はフランチャイズ本部から仕入れることがフランチャイズ契約に規定されていることが一般的です。つまり、セブン・イレブンのフランチャイズ店舗を運営するオーナーが、ファミリーマートの商品を仕入れてセブン・イレブンから仕入れた商品の隣に置くことはできません。

このフランチャイズ店舗が必要とする商品を仕入れる分が、フランチャイズ本部にとっては商品卸代金となります。

また、エステやお掃除などの事業運営に設備や機器が必要になる場合には、その設備や機器のレンタルやリースを行う場合もあります。これらをフランチャイズ本部から直接レンタルやリースを受ける場合には手数料がかかります。また、レンタル会社やリース会社の紹介を受ける場合には、紹介手数料などが発生する場合もあります。特に、開業間もないうちには、リースも通りにくいなどの場合でも、フランチャイズ本部の自社リースなどであれば審査に通らない心配は少なく、必要な設備を分割で支払することができます。

当たり前ではありますが、フランチャイズ店舗の販売量が増加すれば仕入れ量も増加します。そのため定価販売など売上金額を下げずに販売量を増やすことができれば、フランチャイズ店舗の売上とフランチャイズ本部の売上が比例して伸びていくことができます。

一方で、コンビニなどでは仕入れ量は多くなって、コンビニ本部の商品卸代金は増えるものの、“廃棄ロス”といわれる賞味期限切れで廃棄するコンビニ店舗からすると売上につながらないが仕入れ代金というコストがかかることが繰り返す構造もあります。これらのことに対応するために、廃棄ロスに対してコンビニ店舗の損失補填をするコンビニ本部もあります。

フランチャイズ本部の収益は、基本的には各フランチャイズ店舗が儲かっていることで収益が増加するような仕組みになっていることが望まれます。フランチャイズ店舗が儲かればロイヤリティや商品卸代金などでフランチャイズ本部の収入が増えます。また、フランチャイズ店舗が儲かれば、新たにフランチャイズ契約を締結したいオーナーも増加し、規模の利益によってより各フランチャイズ店舗の収益が上がり、フランチャイズ本部の配達コストなどの生産性が上がり利益が増えるというのが良いサイクルと言えます。

フランチャイズの特徴

フランチャイズの特徴

フランチャイズチェーンは、2019年3月末時点で日本国内には1,328チェーンあります。また、その店舗数は26万4,556店で、年間売上高は26兆円です。

チェーン数 店舗数 売上高(百万円) 店舗平均売上高(百万円)
総計 1,328 264,556 26,211,796 99.1
小売業全体 331 110,245 18,582,297 168.6
小売業(コンビニ) 18 58,340 11,263,479 193.1
外食業 568 57,743 4,268,819 73.9
サービス業 429 96,568 3,360,380 34.8

*参照|日本フランチャイズチェーン協会『フランチャイズチェーン統計調査

フランチャイズチェーンは基本的には常に新しいフランチャイズオーナーになってくれる人を募集しています。それは、前述のとおりフランチャイズ店舗が増えればフランチャイズ本部もフランチャイズ店舗もより利益を得る可能性が高まるからです。そのため、フランチャイズで取り扱うビジネスはコンビニを代表とする小売業やサービス業や飲食業のこの3つの業態が大半を占めています。
これらから分かるフランチャイズの特徴は以下になります。

フランチャイズの特徴

  1. ①事業のターゲットが広い
  2. ②開業が簡単
  3. ③店舗運営やオペレーションがノウハウ化されている

①事業のターゲットが広い

コンビニやスーパーなどの小売や、マクドナルドやファミリーレストランなどの飲食業やクリーニングやエステなどのサービス業は、一般消費者全体をターゲットとしています。
コンビニは店舗の前を通過する人すべてが顧客になる可能性を秘めています。また、1,000円カットなどのフランチャイズサービスなども同様で、誰でも髪は切る上に価格を下げることで顧客層を広げることに成功しています。

このように、フランチャイズの特徴の一つは、お客様となるターゲットが広いという点があげられます。また、ターゲットを広くすることは販売やサービス提供の可能性が高くなる点とどこの地域でも出店が可能になるという利点を生み出しています。

②開業が簡単

フランチャイズで展開しているビジネスの大半は、監督官庁の許可が不要です。また、開業時に必要な資金は少ない点があげられます。例えば、建設業であれば取り扱う建設において許可がなければ事業を開始することができません。飲食業も営業許可の届出が必要ですが、その要件は決して難しいものではありません。

また、開業時に苦労した上位3位*は、『顧客・販路の開拓』『資金繰り・資金調達』『財務・税務・法務に関する知識』になっています。その後に、『従業員の確保』と『仕入先・外注先の確保』となります。これらのことを考えると、フランチャイズ加盟店としてすでに認知されているブランド名やサービスを利用できることは、新規で事業を1から立ち上げることに比べると難度が低いということができます。ブランド名があれば、その店舗の経営を誰がしているのかをいうことはあまり消費者の気には止まりません。(参照:日本政策金融公庫総合研究所『2019年新規開業実態調査』より)

セブン・イレブンやマクドナルドやその他有名フランチャイズ店舗に行くときにはその店舗実質経営者が異なっていたとしても、同じサービスが受けられることを前提に集客ができます。また、同じ理由から従業員の確保につながることになります。資金繰りについては、各フランチャイズ本部には、融資制度などがあります。また、仕入れ先などはフランチャイズ本部の収益源になっているため、フランチャイズ店舗が探す必要はありません。

また、フランチャイズ本部は資金面でもサポートをします。近年は加盟金を減額しているフランチャイズ本部もあります。加えて、新規開業時ではありませんが、新型コロナウィルスの感染拡大防止による経営難が発生するフランチャイズ加盟店に対して、セブン・イレブンは最大500万円の融資制度を設けることを制度化しています。また、同様にローソンやファミリーマートなども廃棄負担補填や見舞金制度などを設けています。

③店舗運営やオペレーションがノウハウ化されている

フランチャイズ店舗は、事業運営に必要なことやオペレーションについてノウハウ化されています。また、多くのフランチャイズ運営では、社員やアルバイトなどのスタッフを採用しています。スタッフへの指導などもマニュアル化されているため、指導も安心して実施することができます。マニュアルに加えて、フランチャイズ本部からの指導や研修を受けることもできるため、店舗運営やオペレーションが適切に実施できます。

一方、店舗運営をしているとマニュアル化されていない事態が発生することもあります。これらの事態については、フランチャイズ本部スタッフのアドバイザーから助言を受けることができます。フランチャイズ本部は過去から長い事業運営サポートがあります。そのため、豊富な経験から適切なアドバイスが受けられます。

フランチャイズチェーンでの新規店舗出店までの流れ

直営店の開業と比較すると、フランチャイズ店舗のオーナーは事業の経験が少ない場合が多くなります。そのため、『未経験からでも独立・開業できます』といったフランチャイズ加盟店募集のPR文言もある通り、フランチャイズ本部もそのことを織り込み済みで開業についてもノウハウ化しています。

フランチャイズ本部からみると、新規店舗出店とは新たなフランチャイズ店舗オーナーとフランチャイズ契約を行うことと同じ意味になります。

フランチャイズチェーンでの新規店舗出店までの流れ

●フランチャイズオーナー探し

フランチャイズシステムを利用しての出店を行う場合には、フランチャイズオーナー探しから始めます。前述のとおり、フランチャイズ本部の多くが未経験の方でも開業できるノウハウがあります。そのため、オーナーがやりたいと思えばフランチャイズ本部とともに出店することができます。

●フランチャイズオーナーの希望聞き取り

フランチャイズオーナーにはやりたいことと、複数のフランチャイズ本部を比較しています。独立してフランチャイズオーナーが実現したかったことを以下のように期間と数量を具体的にヒアリングします。
例)
年収は、3年以内に〇〇万円にする。
年間休日は、初年度は〇〇日、それ以降は〇〇日まで取得する。
勤務時間は、3年以内に月間の労働時間を120時間までに抑えられるようにする。

実現したいことが具体的に聞き出せたら、各フランチャイズ本部とも条件や働き方を比較しながら実現可能性をオーナーと共に確認していきます。必要に応じて、すでにフランチャイズ事業を行っているオーナーの力を借りて、実際のフランチャイズ店舗の見学やオーナーの紹介などを行います。また、平均的なオーナーの収入や働き方のモデルを伝えるとオーナーのイメージが沸き易くなります。

●フランチャイズ契約を行う

独立開業のパートナーとなるフランチャイズ店舗オーナーとの契約が、フランチャイズ契約になります。フランチャイズ契約は、フランチャイズオーナーが契約内容を十分に理解したうえで契約を締結することが必要です。なぜならば、契約内容の不理解や誤解が原因でフランチャイズ本部とオーナーの間にトラブルが発生することがあるからです。

勧められて独立・開業をしたのに、といった思いにならないように、フランチャイズオーナーにも経営者の自覚や責任を持ってもらう必要があります。そのため、オーナー自身が目を通すことを依頼することはもちろん、平成15年作成の資料であるため若干古くはありますが経済産業省作成による『フランチャイズに関するトラブル等の現状』などを参考に丁寧な説明を行うことが必要です。

●開業準備を行う

開業準備も、フランチャイズオーナーと共に進めます。集客見込みや立地候補エリアの特性の紹介など開業地選びに必要な情報はフランチャイズ本部として提供していきます。また、今まで事業経験のないオーナーなどは決めること自体に不慣れな場合もあるので、決定するサポートをしていきます。ただし、店舗運営の意思決定とその経営結果の責任はオーナー側にあることをフランチャイズ本部側もフランチャイズオーナーのお互いが忘れてはいけません。そのためには、オーナー側が積極的に意見を出せるような環境造りを意識し、意見を組んだ開業になるようにします。

また、採用と研修もサポートします。特に時期によっては採用が難しいことも多くあります。開業に間に合うように、必要なスタッフを計算して採用活動をサポートします。また、スタッフの採用ができたら、オペレーションの研修を実施します。オペレーションの研修は、オーナーとスタッフの両方に受けてもらう調整が望まれます。なぜなら、オーナーはスタッフのオペレーションを指導するためにもスタッフオペレーションを理解しておくことが必要です。また、スタッフはオペレーションを受けておくことで、開業前後で多忙を極めるオーナーの仕事の一つを減らすことができるからです。

広告やチラシなど、開店に向けてどのような広告活動を行うかもオーナーと共に進める必要があります。フランチャイズ店舗の場合には、一定の知名度があるため、フランチャイズ名称を前面に出し、開業してから順調な経営になるように広告活動を行います。

それぞれのメリットとデメリット

それぞれのメリットとデメリット

直営店とフランチャイズチェーンのそれぞれについて説明しました。多店舗展開を行う上で、自社の資金だけで出店していくレギュラーチェーン(直営店)モデルと、他のオーナーと共に出店していくフランチャイズチェーンのそれぞれにメリットとデメリットがあります。ここからはそれぞれのメリットとデメリットを紹介します。

直営店のメリットとデメリット

直営店は、メリットもデメリットも直営=同一企業で多店舗展開を行っていく、ということに起因していきます。レギュラーチェーンで多店舗展開をしていくメリットとデメリットは以下になります。

直営店のメリットとデメリット

≪メリット≫
①収益がすべて自社に還元される
②意思決定の反映がすぐ行える
≪デメリット≫
①店舗出店のペースに限界がある
②既存店の赤字の影響が大きい
以下にそれぞれの詳細を説明します。

①収益がすべて自社に還元される

直営店で多店舗展開をしていくと、成功も失敗も1つの企業に集約されます。仮に、店舗展開をした直営店が大きな利益を上げた場合には、その利益はすべて企業の利益に還元されます。また、1つの直営店が利益を上げるということは、ブランド価値が高まることや仕入れ量が増えることによる卸先への影響力が強くなるなどの他の直営店や本部機能にプラス面が多く出ます。これらのプラス面もすべて1社に還元されてきます。
つまり、成功する場合にはその成果を独占することができます。

②意思決定の反映がすぐ行える

永く事業を継続していくと、事業環境の大きな変化に直面することがあります。ちょうど、新型コロナウィルス感染予防によって営業時間の短縮や自粛を強いられている現在がちょうどよい事例と言えます。事業環境の変化に対しては、適切かつ迅速な対応を行うことが求められます。レギュラーチェーンであれば、指示・命令の伝達が速くかつその実行が徹底できます。

この指示・命令の徹底は、レギュラーチェーンが全体として成功していくうえで大きな武器になります。まだ運営方法や商品やサービスが固まり切っていない状態であれば、それぞれの店舗でテストや新たな試みにチャレンジすることもできます。その上で、本部で情報の収集と分析を行い、全社最適に落とし込むこともできます。

また、仮に適切な指示・命令に対して従わない店舗の運営者がいた場合には、その人間を異動させることができます。また、同様に店舗の出店や撤退の意思決定も1社でできるということも直営店だからこそできることになります。

一方、直営店のデメリットは以下になります。

①店舗出店のペースに限界がある

多店舗展開を行う店舗出店のペースは、事業の勢いを反映していると消費者には受け入れられます。そのため、新規出店数が多いほうが少ないよりもブランドイメージが強化されます。直営店での多店舗展開を行おうとすると、上場などをしていない場合には自己資金によって新店舗出店資金を賄う必要があります。政府系や民間の金融機関から融資などの資金調達を行うことも可能ですが、それでも出店ペースには限界があります。既存店舗の利益をベースに新店舗出店資金を補うことや、その利益を信用力として資金調達を行うことになるからです。

そのため、収益や利益状態に応じた着実な店舗展開には直営店による多店舗展開が向いているともいうことができます。

②既存店の赤字の影響が大きい

既存店が赤字の場合には、同一資本になるため1社でその損害を被ることになります。赤字幅が多店舗の利益合計より大きい場合には、本部を含めた企業として赤字になる可能性もあります。また、店舗の収益や利益が低いと、多店舗展開にも前述のとおり影響が出てきます。その意味でもレギュラーチェーンにおいて既存店の赤字は大きな影響を持ってしまいます。

フランチャイズチェーンのメリットとデメリット

フランチャイズチェーンを行う本部のメリットとデメリットを紹介します。(なお、フランチャイズビジネスのメリットとデメリットはここでは紹介していません。詳しく知りたい方は、日本フランチャイズチェーン協会「フランチャイズビジネスのメリットとデメリット」などが参考になります。)

直営店が直営=同一企業で多店舗展開を行っていく、ということにメリットとデメリットが起因すると説明しましたが、フランチャイズチェーンも同様です。複数企業ないしは複数のオーナー・事業家によって多店舗展開を行うことが、フランチャイズチェーンのメリットとデメリットに起因しています。

フランチャイズチェーンのメリットとデメリット

≪メリット≫
①店舗展開を一気呵成に実施することができる
②複数の起業家の意見を聞くことができる
≪デメリット≫
①新規出店や閉鎖のコントロールが難しい
②加盟店とのトラブルなど、チェーン全体の意思統一が難しい

①店舗展開を一気呵成に実施することができる

フランチャイズビジネスモデルは、前提としてマニュアル化できるものでなくてはなりません。そのため、ビジネス自体がシンプルな場合が多いと言えます。そのため、シェアを一気に取りに行き、競合他社が参入することが困難になるようにすることが成功モデルと言えます。

具体的には、販売している商品が当たって多店舗展開を使用とする時に、類似商品を販売する店舗が増えた時に迅速な多店舗展開が必要になります。多店舗展開をすることで、消費者にブランディングと実際に来店してもらい購入してもらうことで類似商品や競合他社を退けることをおこないます。そのためには、店舗展開は早ければ早いほど良いことになります。

この点で、フランチャイズチェーンはそれぞれの店舗を運営するのは異なる事業者であり、それぞれが開業ならびに運営資金を調達しています。そのために、資金によって店舗展開の速度が変わらないという点が大きなメリットになります。つまり、フランチャイズチェーン展開においては、自社が展開するビジネスモデルをやりたいと思う起業希望者を集められれば一気呵成の店舗展開を実現することができます。

②複数の起業家の意見を聞くことができる

フランチャイズチェーンにおいて、店舗の利益はフランチャイズ店舗オーナーのキャッシュフローに影響してきます。そのため、フランチャイズ店舗オーナーはその店舗経営に真剣に取り組みます。そして、店舗経営のパートナーともいえるフランチャイズ本部へも真剣かつ厳しい視点での意見が出ます。自分のお金を使って店舗運営をしている経営者だから出る意見というのは、それ以降のフランチャイズ運営に役立つ情報を多く含んでいます。

これらの意見を収集して、分析することで将来の事業運営や商品展開に役立てることができます。

一方で、フランチャイズチェーンのデメリットは以下の通りになります。

①新規出店や閉鎖のコントロールが難しい

フランチャイズの加盟希望者が多く集まれば新規出店はうまく行きますが、集まらない場合もあります。そのような状況だと、多店舗展開が進まなくなってしまいます。加盟店の獲得ができなければ、フランチャイズ本部の収益元である加盟金やロイヤリティを得ることができません

一方で、加盟店の収益が出ていない状況で、フランチャイズ本部としては閉鎖をすべきと判断する場合でもフランチャイズオーナーの意向と相違する場合には、閉鎖をすることができません。同様に、フランチャイズ本部はフランチャイズ店舗に対して指示・命令を行う関係にないため、事業転換などの大きな変化が必要な場合に同意や条件交渉を行う必要がある点はデメリットになります。

②加盟店とのトラブルがある

別資本であるフランチャイズ加盟店とは、利益が出ている状況であっても利益が出ていない状況でもトラブルの火種があります。加盟店は、フランチャイズ本部により多く有益な動きをとってもらいながら、ロイヤリティなどは下げてほしいと望みます。特に利益が出ていない加盟店は余計の上記の要求が強くなります。最悪の結果として、加盟店の不正などにつながるため、できるだけ早急に要求には折り合いをつける必要があります。

まとめ

まとめ

今回は、多店舗展開を行う手段としての直営店(レギュラーチェーン)とフランチャイズチェーンについての概要説明と、それぞれのメリットとデメリットについて解説しました。本質的な部分として、多店舗展開の資本・資金を誰が提供するかによる差がメリットとデメリットを生み出していることをご理解いただけたかと思います。

多店舗展開を検討する時には、自社の資産状況と他社の資本・資金を利用するメリットとデメリットを比較して、直営店でいくのかフランチャイズチェーンで行くのかを検討することをおススメします。